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宇野和美

幼い頃の私は何事につけ、年子の姉の多大な影響下にありました。小学生のときの本選びもしかり。私が手にとった本の大半は、布団で読んだら目が悪くなると親に叱られながら掛け布団の下に電気スタンドをひきこんで本を読んでいた姉にすすめられたものでした。
そんなわけで、思い出したとき、姉がおもしろがっていただけなのか、自分もおもしろがっていたのか、記憶があいまいな本が多いのですが、小学校の中学年で読んだクリアリーのヘンリーくんシリーズだけは、「おもしろかった」と自分でもはっきりと覚えている作品です。今、読み返してみると、2つの魅力があった気がします。ヘンリーくんたちがああだこうだと考え、親という壁をものともせず行動することへの共感と、異文化への憧れです。我が家は両親の管理が厳しかったので、彼らの活躍は胸のすくものがありました。そして、思考回路がよくわかる登場人物たちが、ミミズをとって小遣い稼ぎをしたり、家でケーキを作ってもらったり、当時の日本の小学生には考えられないことをする驚き。
シリーズ中で最も心に残っているのは『ビーザスといたずらラモーナ』です。うんざりしながら、結局は妹の面倒をちゃんとみてくれるビーザスに、自分の姉もそうなのかなと考えさせられたり、地下室のリンゴを一口ずつ食べてしまうラモーナに、自分はこれほど悪くないと安心したり、ラモーナの言う「まねーしごんぼ、ねしーまごんぼ」という文句を、姉と早口で言いあったりしたものです。その一方で、この本から芽生えた、ここではない世界があることへの漠然とした希望や、その広い世界への好奇心が、その後ますます私を日本より海外の児童文学へと向かわせた気がします。

●宇野和美(うの・かずみ)
大学でスペイン語を専攻。辞書編集部員として出版社勤務後、翻訳者を志す。30代後半で3人の子を連れてスペイン留学。『むこう岸には』(マルタ・カラコス作 ほるぷ出版)、『雨あがりのメデジン』(アルフレッド・ゴメス=セルダ作 鈴木出版)など、訳書の多くは自ら探して出版にこぎつけたもの。ネットでスペイン語の子どもの本専門店(ミランフ洋書店)を営み、本を通じた在日中南米国籍の子どもたちへの支援活動にも取り組む。

■わたしがくりかえし読む本
『ヴェネツィアの宿』 
特に「大聖堂まで」の章

LinkIconミランフ洋書店

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●ここに出てくる本

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『ビーザスといたずらラモーナ』
●ベバリイ・クリアリー/作
●ルイス・ダーリング/絵
●松岡享子/訳
●学習研究社

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『ヴェネツィアの宿』
●須賀敦子/文
●文春文庫