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小長谷有紀

中学生のころ、日記代わりに「小説」をこつこつ書きためていた。女流小説家にでもなりそうな勢いだったのは、小学生のころから読書にいそしみ、現実世界よりも面白い世界を実感していたからだと思う。しかし、だからといって、「この1冊!」と選択できるものがない。日々研鑽した記憶は大脳皮質から脳幹へ移り、すでに本能に埋め込まれたのかもしれない。あるいはまた、これという衝撃を受けなかったから、とうとう文学の道には進まなかったのかもしれない。もし、そうだとすれば、無理に1冊を選ばないことにも意味があるだろう。誰もが本の書き手や作り手になる必要はない。それどころか、読者にとどまる人が多ければ多いほど、本にとっては幸せな環境であるともいえるのだから。
わたしにとっての書棚は、学校の図書館と近所にある貸本屋さんだった。「少年少女世界文学全集」(講談社)、「少年少女世界の名作文学」(小学館)、「少年少女世界推理文学全集」(あかね書房)などのシリーズで育った。「ふしぎの国のアリス」「若草物語」「アルプスの少女」「小公女」「赤毛のアン」「あしながおじさん」など、少女たちは少年にひけをとらず大活躍しているので、私の脳内では「男女共同参画」はとうに実現されていた!
だから、かえって、少年がスマートに問題解決してくれたりすると実にレアーな経験となった。わたしにとってヒーローは小林少年をおいてほかにない。しかも和製だから、身近なところにいつか、こんなスマートな少年が現れるかもしれないではないか。江戸川乱歩の『怪人二十面相』をはじめとする「少年探偵団」シリーズで、私は淡い期待を抱きつつ、リーダーシップとフォロワーシップを学んだような気がする。


小長谷有紀(こながや・ゆき)
早くから独立願望が強く、中学生時代に早稲田速記を習得。これで手に職をつけた! と大いなる勘違いをしていました。ただし、記録術の基本が身についたとはいえます。モンゴル高原のあちこちで、おじいさんやおばあさんたちのお話を聞くときの、基礎体力となっています。人びとの頭の中にあることを本のように読み味わう仕事をしています。
大学共同利用機関法人人間文化研究機構理事。

■わたしがくりかえし読む本
わたしが子育てをしていたころ、ひいきにした少年は「コナンくん」です。「名探偵コナン」の映画のシリーズはほとんど全部、子どもたちといっしょに見に行きました。彼らは、中高生になるともはや自分たちで見に行くようになり、成人した今でも、友人たちと同シリーズの映画を見ているようです。「少年探偵団」が時代を超えて作り続けられているからこそ、「少年探偵団」への関心も世代を超えて繰り返されている、というわけです。

『名探偵コナン』(原作84巻:2014年7月18日現在)
●青山剛昌/作
●小学館

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●ここに出てくる本

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『怪人二十面相』
〈江戸川乱歩・少年探偵シリーズ1〉
●江戸川乱歩/作
ポプラ文庫クラシック

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『少年探偵団』
〈江戸川乱歩・少年探偵シリーズ1〉
●江戸川乱歩/作
ポプラ文庫クラシック