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小松原宏子

その題名を聞くだけで、私は今も胸がいっぱいになります。

「るるこは、おかあさんから、とても大きいももいろのかみをもらいました」
その書き出しのとなりには、ページいっぱいももいろのさし絵。こんなに胸をときめかせる絵には、生涯二度とお目にかかれませんでした。ももいろの紙のうえに立った、ももいろのるるこ。ただ、それだけなのに。

るるこは、ももいろの紙できりんのキリカをつくります。「ももいろのきりん」のキリカは世界一つよくてはやく、るるこを大冒険の旅に連れ出してくれます。

けれども、私にとっていちばん強烈だったのは、物語のなかに一度も登場しない「るるこのおかあさん」でした。ひとことも話さず、姿も見えないのに、その存在感たるや、るるこやキリカの比ではありません。きりんが作れるほど大きなももいろの紙をくれる、不思議なおかあさん。すべては、この1枚の紙からはじまるのですから。

ずっと待っていたけれど、私のおかあさんはももいろの紙をくれませんでした。この物語を愛すれば愛するほど、この本を繰り返し読めば読むほど、私は、ももいろの紙がもらえないことがかなしくなりました。

あれから50年がたちました。けれども、私は今も、「ももいろのきりん」ということばを聞くたびに、ももいろの紙がほしくなります。何かの象徴でもメタファーでもない、本当に部屋いっぱいに広がるほどの、きれいなももいろの紙が。

そして、やっぱりもらえないんだなあ、と思ってせつなくなるのです。


小松原宏子(こまつばら・ひろこ)
1960年東京生まれ。幼稚園児のときからおとなになるまで、いぬいとみこ主宰の「ムーシカ文庫」で本を読んで育つ。
現在、自宅で「ロールパン文庫」を主宰。児童書の創作・翻訳にも携わっている。処女出版は『いい夢ひとつおあずかり』。
小学校1年生のときから現在に至るまで、50年近く読書記録ノートをつけ続けている。

■わたしがくりかえし読む本
『クローディアの秘密』 
ふたりの姉弟がバイオリンとトランペットのケースに着替えを入れて家出した先はメトロポリタン美術館! 初めて読んだのは中学生のときでしたが、この「リアルなファンタジー」にすっかりやられてしまいました。

LinkIcon小松原宏子さんのHP

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●ここに出てくる本

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『ももいろのきりん』
●中川李枝子/作 
●中川宗弥/絵
●福音館書店

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『クローディアの秘密』
●E・L・カニグズバーグ/作 
●松永ふみ子/訳 
●岩波書店

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『いい夢ひとつおあずかり』
●小松原宏子/作
●北見葉胡/絵
●くもん出版