第0回
「幼年童話」は絵本と読み物の間を橋渡しするジャンルとまことしやかに説明されることが多いですが、とんでもない。絵本がchildren’s bookではなくpicturebookなんだといって表現のはばを広げてきたように、児童文学の世界も、Y.A.やファンタジーや10代の虚無を描いて拡散していきました。その様子は『越境する児童文学──世紀末からゼロ年代へ』(野上暁)に詳しく、それでもなお、わたしは「児童」文学とは何なのかということを、編集の現場でずっと考えています。なぜ、大人が子どもに向けて作品を書くのか。子どもに向けて「書く」ということはどういうことなのか。そのもともとを考えるために、あえて幼年期──ある程度の集団生活も経験し、いろんな思いをもつこともできるけれど、それを言語化する手だてをもたない──の子どもたちに向けたと思われる本を読み直し、「子どもの本」とは何かを問い直したいのです。
妹にプレゼントされた本を横どりして読んでいたころから好きだった本や、最近出版された本、まだ翻訳出版されていない本など、手許にあるお気に入りを読み解きつつ、「子どもの本」の豊かな土壌をほりおこしたいと思います。
■各回のテーマ(予定部分は仮題)
第1回 幼年童話ってなに?
第2回 ふたりのおはなし
第3回 動物はともだち
第4回 家族という物語
第5回 学校、園という社会
第6回 ふしぎに驚く力
以下、未定