第0回

トルコの児童文学界は、ここ10年で大きく前進したといえる。しかし、こどものため、ヤングアダルトのための文学の重要性、必要性はまだまだ認知されていない。作品も、全体的に発展途上といえる。19世紀にはすでにこども向けの新聞が発行され、物語や科学情報などが発売されていたのに、である。
国の教育システムの問題、子ども時代に本を読むという習慣の軽視、宗教のからみなど、多々問題はある。また、公共の図書館がないことも大きな原因かもしれない。社会的に改善すべきことは山積みなのだ。
しかし、その中でも自社の作品の質をヨーロッパスタンダードへと引き上げ、世界の作品をトルコへ、トルコの作品を世界へ、と精力的に活動している児童書出版社がある。ギュンウシュウ出版。「ギュン」は太陽、「ウシュウ」とは光のこと。“おひさまの出版社”である。
イスタンブルのブックフェアで、ギュンウシュウのブースにたまたま立ち寄ったのが始まりだった。手に取った作品が、(日本から見て)外国作品とそん色なかった。いろいろ読んでいくうちに、ギュンウシュウの作品なら日本でもいけるのでは、と考えた。スタッフも意識が高く、トルコ語を話せるヨーロッパ人の編集者もいる。これは伸びる、と思った。実際、ここ5年ほど毎年ブックフェアでブースにお邪魔しているが、編集長のハンデ・デミルタシュさんを訪れる海外の出版社の数は増え続けている。各国語版も次々と準備され、出版されている。
日本ではまだ影の薄い、というよりほとんど認知されていないトルコ文学。トルコ児童文学なら、なおさらである。そこで、考えた。この際、ギュンウシュウのスタッフに語っていただこう。私があれこれ言うよりも、彼らの児童書に対する真しな姿勢が伝わるはずである。
ハンデさんにそうもちかけると、ふたつ返事でOKを下さった。ご厚意に甘えて、忙しい編集部の方々にインタビューをさせていただき、連載形式でご紹介していく。トルコの児童文学、ギュンウシュウの作品に少しでも興味をもっていただけることを願いつつ……。

また、快くご協力いただいたギュンウシュウ編集部の皆様に、この場を借りてお礼申し上げます。

■第1回 Mine SOYSAL ミネ・ソイサル

■第2回 Hande DENİRTAŞ ハンデ・デミルタシュ(1)

■第3回 Hande DENİRTAŞ ハンデ・デミルタシュ(2)

■第4回 İstanbul Kitap Fuarı 2013 2013年イスタンブル・ブックフェア

■第5回 Mehmet ERKURT メフメット・エルクルト

■第6回 İstanbul Kitap Fuarı 2014ー2014年イスタンブル・ブックフェア1

■第7回 İstanbul Kitap Fuarı 2014ー2014年イスタンブル・ブックフェア2

■第8回 Canan Topaloğlu~若手編集者ジャナン・トパルオール

■第9回 İstanbul Kitap Fuarı 2015 ~ 2015年イスタンブル・ブックフェア1

■第10回 İstanbul Kitap Fuarı 2015 ~ 2015年イスタンブル・ブックフェア2

■第11回 İstanbul Kitap Fuarı 2015 ~ 2015年イスタンブル・ブックフェア3

■第12回 2016年の人気作品

■第13回 2016年の人気作品②

■第14回 2016年の人気作品③

■第15回 2016年の人気作品④











●著者紹介

鈴木郁子(すずき・いくこ)


「トルコ文学を学ぼう」と決め、出版関係の仕事を辞め、再び学生になるためにトルコ入りしたのは、2006年4月のこと。日本の大学で学んだのは日本の上代文学で、トルコ文学のことは何も知らなかった。
語学学校を経て、トルコはイスタンブルのマルマラ国立大学大学院に合格したのが2008年9月。トルコ学研究所の近・現代トルコ文学室に籍を置き、19世紀末から現代までのトルコ文学を学んできた。トルコ語で書いた修士論文のテーマは『アフメット・ハーシムの詩に見える俳句的美意識の影響』。帰国後も、近・現代トルコ文学研究、翻訳、通訳、講師など、トルコ語に携わる。児童書を含め、トルコ文学を少しでも日本に紹介しようと動いている。