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第12回



2016年はトルコにとってかなり厳しい年となった。国内の問題に加えて世界的な情勢も影響し、日本でも報道されたように大きな事件が相次いだ。例年のイスタンブル・ブックフェアーに合わせてトルコへ飛ぶか飛ばないか。筆者も悩んだが、結局、初めてトルコに行けない年となってしまった。
ギュンウシュウ出版のハンデ・デミルタシュさんにメールをすると、「色々ありますが、ギュンウシュウは子どもたちに良い本を届ける、それだけを考えて動いています。この混乱も、きっと収まります。大丈夫」と返事をいただいた。そこで、2016年に発売された人気の作品を教えていただき、紹介する形にした。
2018年は、IBBYの大会がイスタンブルで開催されることだし、今年はブックフェアーを訪れることができれば、と思っている。


1 Dondurmam Tılsım/『アイスクリームのお守り』
ギュンウシュウ出版でも多くの作品を発表してきたミュゲ・イプリッキチが、オリーブの林を守ろうとする少女と、その周囲の人たちの日々を描く。小学校高学年以上推奨。

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© Günışığı Kitaplığı

父さんを炭坑の事故で亡くしたセヘルは、母さんと一緒にゼリンおばさんの家に身を寄せることになった。斜面にオリーブの木がしげる町での、新しい生活とオリーブの林を守るために、セヘルは奮闘することになる。フルキ・スングルが地域のオリーブの林を一掃しようとしていたのだ。
親友のサニイェと食べたアイスクリームの味が、全ての問題の始まりになった。ゼリンおばさんの協力を得てセヘルは、「複数の選択肢」がある問題の正しい答えを見つけようとする。

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© ikuko suzuki エーゲ海地方イズミル県のオリーブ畑


2 Çatıdaki Gezegen/『屋根の上の旅行者』
べヒチ・アクが、子どもたちに空を見上げて、自由に想像を膨らませてほしいと考えて書いた作品。小学校高学年以上推奨。

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© Günışığı Kitaplığı

学校の行き帰りもひとりではできないし、させてももらえないセルダル。道でボールをけることも知らない、いわゆる「都会っ子」だった。毎週日曜日は掃除機に追いたてられるし、だからといって行く場所もない。今と違う世界があるのでは、など考えたこともない。
そんな日々は、同じアパルトマンに住む友だちジェレンに誘われて屋根裏に入り込み、そこから今まで知らなかった「旅行」に出たことで終わりを告げる。屋根の上には、詩人、セルダルみたいに退屈した子どもたち、ドン・キホーテまでが歩き回っていたのだ。さらに、古い旅行記、見たことのない冒険物語も隠されていた。

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© ikuko suzuki ぎっしりとアパルトマンがつまったイスタンブルの町並み

イスタンブルのようなトルコの都市部では、新旧のアパルトマンや新しい高層マンションが立ち並び、子どもたちが道で遊ぶことは難しくなっている。それに、トルコのドライバーの運転は非常に荒い。テレビゲームなどの普及により、屋内での遊びが急激に増えたと言われている。そんな子どもたちに向けて、ベヒチ・アクが外にはもっと面白いことが待っているとのメッセージを込めた。


3 Çantasızlar Kampı/『夏休み組のキャンプ』
作家ベフチェット・チェリキの初の児童文学作品。ギュンウシュウ出版では、ヤングアダルト作品『Sınıfın Yenisi (教室の新入り)』(2011)を発表している。小学校中学年以上推奨。

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© Günışığı Kitaplığı

夏休み、5人の仲間は、重たい学校のカバンから自由になった。森に囲まれたすてきな場所でキャンプもできるなんて、最高だ。ケレム、デフネ、ヴェダット、バラン、ゼイネップは、自分たちのグループに「夏休み組」と名前をつけることにした。
取り壊し寸前のアパルトマンから、立ちのきを拒否しているアキフさんの向かいの空き部屋を、5人は秘密基地にすることに決めた。しかしドアには南京錠がかけられてしまう。夏休み組は、自分たちの秘密基地を何とか取り返そうと作戦を練る。
子どもたちの描写に加え、その周囲の大人たち、アイシェおばあちゃん、アリおじいちゃん、ウフクさんも生き生きと描かれている。ウフクさんの「多分、大人になるってことは、楽しみを捨てるってことではないんだろうな」という言葉どおり、「昔の子どもたち」も読者として楽しめる作品となっている。

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執筆者プロフィール

Müge İPLİKÇİ
(ミュゲ・イプリッキチ)
1966年イスタンブル生まれ。イスタンブル大学英文学科を卒業。同大学の女性問題研究所に所属し、アメリカ・オハイオ大学の専門講義を受ける。女性問題を扱った小説を多く発表し、2010年にギュンウシュウ出版の、ヤングアダルト向け「架け橋」文庫から刊行された『目撃者は嘘をついた』が、最初の若年層向けの作品となる。
最初の児童書『飛んだ火曜日』に続いて発表された『とんでもない大航海』は、2009年に古代の技術を使って復元されたガレー船・キベレ号の実際の航海からヒントを得て書かれた。

Behiç AK
(ベヒチ・アク)
1956年、黒海地方のサムスン生まれ。イスタンブルで建築を学んだ後、1982年からジュムフリイェット紙に漫画を連載。児童書作家、漫画家、劇作家、美術評論家、ドキュメンタリー映画監督の顔を持つ。
児童書のうち『ビルにのぼった雲』『ネコの島』『めがねをかけたドラゴン』などは日本語に翻訳、出版されている。また、過去の作品を新しい装丁でギュンウシュウ出版より発表した。『ベヒチ・アクの笑い話』というタイトルにまとめられた物語は、子どもだけでなく大人の読者からも支持を受けている。30年来の漫画を集めた『ベヒチ・アクのイラスト集』も人気を博している。
大の猫好きで知られ、イスタンブルに暮らす。

Behçet Çelik
(ベフチェット・チェリキ)
1968年、エーゲ海地方のアダナ生まれ。1990年、イスタンブル大学法学部を卒業。在学中から執筆活動を始め、様々な文学雑誌に掲載される。『Diken Ucu(棘の先)』で、2008年のサイト・ファーイク短編文学賞、2011年にはハルドゥン・タネル文学賞を受賞した。最新の小説は『Kaldığımız Yer (この場所)』(2015)。
ギュンウシュウ出版で、初のヤングアダルト作品『Sınıfın Yenisi (教室の新入り)』(2011)の発表後、新ジャンルとなる児童文学作品に挑戦したのが、『Çantasızlar Kampı(夏休み組のキャンプ)』。
妻と共にイスタンブルに暮らす。