第17回


2017年は、2年ぶりにトルコを訪れ、イスタンブル・ブックフェアーにも立ち寄ることができた。36回目となったブックフェアーは、2017年12月4~12日にかけて開催され、来場者は主催側の発表によれば742,445人を数えた。2016年が約621万人で過去最高だったそうなので、記録を再更新したことになる。確かに会場についてみると複数ある入場口は、開場時間前からトルコの人がみっちり詰まった状況。もちろん、整列などしていない。人混みをかき分けてどんどん前に行く老若男女もいる。多数いる。こちらはかき分けられながら、ああ、トルコだなあと思っていた。ギュンウシュウ出版のハンデ・デミルタシュさんは、お元気だった。喉に残る風邪をひいたそうで、時々咳をしながらも、2017年の新刊について熱く語ってくださった。2017年は、英語のパンフレットやあらすじなども充実させたので、今後のトルコ国外への発信を形にしたいとのこと。こうしてお会いするのも大分長くなってきたので、こちらも何か進めることができればと思っている。以下、2017年のギュンウシュウ出版の新刊を紹介する。

1.Eyvah! Babam Şiir Yazıyor!/『わあ! パパが詩をかいた!』
ヤングアダルトのON8文庫で、İnsan Kendine de İyi Gelir(人とはこれ、良きもの)、Gizli Sevenler Cemiyeti(密かに愛しむ人たちの会)などを発表した、人気作家アフメット・ビュケが、初めて手がけた児童書。ゼイノの家族シリーズの一作目。小学校低学年以上推奨。挿絵はセダット・ギルギン。



© Günışığı Kitaplığı

ゼイノはパパとママが大好き。ママのセイヴィンチは宇宙科学者、パパのアフメットは市の苦情係りで働いている。ママは仕事が忙しくてよく家を留守にする。その間、ゼイノとパパは二人暮らしだ。ゼイノがママを恋しがると、パパはベランダにゼイノを連れ出して一緒に寝転がる。「パパ、ママは今どこにいるのかな?」とゼイノが聞くと、パパは「あのへんだな」と指をさして教えてくれる。そして、こっちに向かって手を振っているんだと言ってくれる。パパはすごく楽しい人だから、二人暮らしはなかなか楽しく過ぎる。
それにパパは、世界では全然知られていないけれど、ゼイノ一家の中では有名な詩人なのだ。パパの詩はゼイノも元気にしてくれる。そして、毎日市役所に電話をかけては文句を言ってくる不幸な人たちの問題にも、大切な答えを導き出してくれる。

2. Annemle Uzayda /『ママと宇宙へ』

アフメット・ビュケのゼイノの家族シリーズの二作目。上記のEyvah! Babam Şiir Yazıyor!/『わあ! パパが詩をかいた!』の続編となる。小学校低学年以上推奨。


© Günışığı Kitaplığı

ある日、ママはチョコレートでできた卵を買って帰ってきた。中に色々なおもちゃが入っている「びっくりたまご」だ。そして、もっとびっくりすることを発表した。「試験にも健康診断にも受かって、私は、宇宙飛行士になったの!」。それが二年前のこと。
それからママはもっと忙しくなった。研究会や訓練がたくさんあってなかなか家に帰れなくなったけれど、ゼイノとパパとママの間のつながりは、もっと強くなった。ママは、もし月での任務に行くことになったら、小さな月の石を持って帰ってくると約束してくれた。そんなママに代わって、パパが家事をする。なかなか上手にこなしているけれど、アイロンは嫌いみたいだ。「電動歯ブラシまであるのに、アイロンがけしなくていいワイシャツやズボンはどうして発明されないんだ」とブツブツ言っている。
そんな中、パパが仕事を辞めると言い出した。そしてママはゼイノに、一緒に宇宙へ行こうと言う。 アフメット・ビュケは、ゼイノの家族をブドウの房になぞらえ、その愛情と結びつきを描く。同時に、母親が仕事をして、父が家のことをするという、「立場の逆転した」夫婦像というものを前面に出した。現代のトルコにおいては、まだあまり見られない――夫に仕事が無く、仕方なく妻が働きに出るというものではなく――互いに独立した夫婦の選択を示すことで、子どもたちに色々な道や家族があることを示す作品でもある。




執筆者プロフィール

Ahmet Büke

(アフメット・ビュケ)
1970年、トルコ・エーゲ海地方のマニサ生まれ。1997年、イズミル・ドクズ・エイリュリュ大学の経済行政学部経済学科を卒業。2008年、オウズ・アタイ文学賞、2011年サイト・ファーイク文学賞を受賞した。精力的に作品を発表してきたが、近年その場を雑誌からインターネットに移した。ギュンウシュウ出版での最初の作品となるMevzumuz Derin(深い問題、2013)も、ON8文庫のブログに連載されていた『ベドの本棚』を書籍化したもの。同作はÇocuk ve Gençlik Yayınları Derneği’nin(ÇGYD/児童・ヤングアダルト図書協会)で、同年のヤングアダルト作品賞を受賞した。自身の発表の場としても、複数のブログを持っている。
2015年に、書籍について独自の視線で解析・紹介をする、100 Tuhaf Kitap(百の奇妙な本)を発表した。2017年に初めての児童向け作品に挑戦した。
家族と共にイズミルに暮らす。