第10回
1 Sevgili Öğretmen/『大好きな先生へ』
短編に定評のあるNecat GÜNGÖR(ネジャト・ギュンギョル)の、教師と子どもたちの関係をテーマにした11編の短編集。小学校中学年以上。
© Günışığı Kitaplığı
ひとりの少年が成長して、恩師に手紙を書いた。表題となっている「大好きな先生へ」が、11編の最初に置かれている。
彼がまだ小さいころ、市場で八百屋をしている父の身入りは少なく、彼は学校用品や本を買うお金を自分で稼がなくてはならなかった。午前中の授業が終わったあと、バイクの修理工房で働くことになる。最初の給料で買った本を担任の先生にほめられてから、彼の人生は大きく変わっていく。
ほか、「自由」「やってみよう」「心から笑った子」「思い出のために」「ふるさとの先生」「先生と母さん」など。登場人物たちは教師と児童・生徒として、また人間同士として向きあい、たがいに影響をあたえあう。
トルコの学校の新年度は9月に始まる。年度末の夏休みに入るころ、新しい学校カバンのモデルが店頭に並ぶ。日本のようなランドセルではなくリュックサックタイプで、近年は映画やアニメのキャラクターがついたものが人気。
©ikuko suzuki
2 Seke Seke Uçtu Öyküler/『おはなしはピョンピョンとびまわる』
Gürsen ÖZEN(ギュルセン・オゼン)の最初の作品。小学校中学年以上。
ハンデさんはこの本を紹介するときにいろいろお話をしてくれたが、最後にこうつけ加えた。
「私がここでどんなに話しても、この作品の色とりどりの世界は説明できないの。ぜひ手にとって、その目で読んでほしいと思います」
© Günışığı Kitaplığı
トルコ文学の教師をしていた作者のギュルセン・オゼンの短編集。15編が収められている。町にやってきた風船売り(「風船とあわと怒りんぼ」)、キャンプのテントで眠るという体験(「しずかでまっくら」)、星をつかまえる実験(「星をのせた子どもたち」)など。ふつうぎていく毎日の楽しいことをテーマに、さまざまな時代のトルコのふつうの子どもたちを描く。ほか、「ウサギ同盟」「穴あきチーズ」「チョコレート色の声」など。
挿絵は、トルコの児童書界では重要な画家のひとりMustafa Delioğlu(ムスタファ・デリオール)。
3 DARMADAĞIN/『どうしたらいいの』
「小さな魔女シェロクス」シリーズで人気のAsıl DER(アスル・デル)のヤングアダルト作品の2冊目。中学生以上。
© Günışığı Kitaplığı
ヤングアダルト1作目となるとなるDefne’yi Beklerken/『デフネを待ちながら』では、ワーカホリックの母と文筆業の父にふり向いてもらえない孤独な少女デフネの日々を描いた。今作では、崩壊寸前の家族の子どもたちの友情がテーマとなる。家庭内の問題、とくに母に向けられた父のDVを思春期の少女の視点から映しだしながら、なんとか外の世界を見ようとする子どもたちの成長を描く。
エジェは、家族に──とくに母さんに──ふるわれる父さんの暴力にどう立ち向かったらいいのかわからない。外に向けてはとてもいい人なのに、家のなかでは父さんは別人のようだ。母さんはひたすら耐えるだけで、父さんと離婚しようとは思わないらしい。
ある日、エジェのアパルトマンにジェムの一家が引っ越してきた。ジェムとなかよくなったエジェは、彼のおかげで少し、毎日に希望が見えてきたと思った。だが、家族の問題はふくれあがるばかり。さらに、旅行先で出会った外国人たちの楽しそうなようすを見て、エジェはこのままではいけないと悟る。マンションの空き部屋をこっそりと「秘密基地」として使うことにしたふたりは、悩みを打ち明けあい、なんとか現状を打破しようとする。
ファンタジーのシェロクス・シリーズとはうって変わった、現実的なテーマを扱うアスル・デルのヤングアダルト作品。だが、IBBYにも評価されたシェロクス・シリーズの作家とあって評価は高い。表紙は、ギュンウシュウ出版の作品に独特の世界観をあたえるSadi GÜRAN(サディ・ギュラン)。