第14回
1 Babaannemin İçine Uzaylı Kaçtı! /『おばあちゃんの中に宇宙人が!』
謎解きを中心とした作風で作品を発表しているセヴギ・サイグが、テンポの良さとユーモアを交えて、子どもたちと老人たちを描く。小学校中学年以上推奨。
© Günışığı Kitaplığı
アラズとアヤズのおばあちゃん、ベヒジェ婦人。みんなビジと呼んでいる。そのビジおばあちゃんが、日に日に変わっていく。理由が全然わからない。アヤズの意見はこうだった。「おばあちゃんの中に、宇宙人が入りこんでいる!」
近所のけんか友だちのボラも言い出した。「君んちのおばあちゃん、すごく変だよ。何があったの?」アラズは腹が立ったので、「おばあちゃんの中に宇宙人がいる」と言ってやった。食べ物の中にまぎれ込んでいた、すごく小さな宇宙人かもね、と。そうしたら、お母さんがアラズを呼びにきた。アヤズを歯医者に連れていくから、ビジおばあちゃんとふたりで留守番していてほしいという。「ビジおばあちゃんは、昼寝しているからね。私たちが帰ってくるまでは、寝ているかもしれないわ。もし、その前に目をさましたら、台所には入れちゃだめよ。それから……」
宇宙人のせいで変わっていくおばあちゃんのことで、ボラには「考えがある」と言ったけれど、本当はアラズには何の考えも浮かんでこない。何人かの友だちで集まって「宇宙人と交流する会」を結成することになった。ある日、その中のひとり、トゥナが言い出した。「UFOを見つけるために、屋根に上ろう」と。
実はビジおばあちゃんは、アルツハイマー型認知症になっており、周囲の大人たちにとっては難しい状況である。しかし、子どもたちの目から見たとき、不思議に変わっていく祖母の姿は、そうと知らなければ何か別の理由があることになる。現実の問題をユーモアに包んで描き出す、セヴギ・サイグの得意とする方法をいかした作品である。
2 Gökkuşağı Yazı /『虹の夏』
ASDと診断された妹を持つ少女の繊細な心の動きを描いた、セヴィム・アクの作品。小学校中学年以上推奨。
© Günışığı Kitaplığı
休みの終わり、メリサはおばあちゃんの別荘から2キロほどやせて戻ってきた。軽度のASDの妹ギョクスのめんどうを見るのが本当に大変だったからだ。
父さんと母さんは仕事に没頭していて、ギョクスのことを心配するのはメリサの役目だった。妹をいつもちゃんと見ていないと、メリサが叱られる。それでなくても、11年の人生のうち4年を、妹につきっきりで過ごしてきたのに。まだ足りないとでも、いうかのようだ。
でも、この夏、ブビッキという名前の少年が、メリサの毎日に突然現れた。いつもスケートボードに乗っているその少年は、メリサの人生に今までないくらいの彩りをもたらしてくれた。ふたりは、周りを取り巻く大人たちの複雑な事情を少しずつでも理解しようとしていく。
ベヒチ・アクの妹のセヴィム・アクには、子どもたちの心の動きを描き出す作品が多い。本作の主人公メリサは、いつも仕事で忙しくしている両親と、自分がめんどうを見なくてはならないASDの妹に囲まれ、現状を受け入れてはいるが、苦しさも感じている。また母には買い物依存症のような面もあり、買ってきては袋のまましまい込まれる服をそっと見るのがメリサの楽しみだったりもする。このような難しい現実を題材としながらも、それを乗り越える希望がセヴィム・アクの主題である。
セヴィム・アクは多くの児童書作品を発表しているが、ギュンウシュウ出版では初めての作品となる。