第18回


1.Kim Bu Gelen ?/『だれが きたの?』
若手イラストレーター、ギョクチェ・イルテンの絵と擬音語のみで構成された絵本。34歳以上推奨。


© Günışığı Kitaplığı

白と黒と茶色の三羽のニワトリが、チェス遊びをしている。そこへ、「誰か」の大きな脚が現れた! 見たこともない大きな「誰か」に三羽は羽をバタバタさせて大騒ぎになる。次のページをめくると、「誰か」はすごく背が高いらしいことが分かる。「コケコケ」言いながら、飛び上がっても脚しか見えない。そこで黒いニワトリが竹馬を持ち出してきた。黒いニワトリが竹馬をはいて歩きだすと、「誰か」のおしりの模様が見えてきて……
ギュンウシュウ出版は「文章」に重きを置く傾向があるが、絵と音だけで成り立つこの作品は、同出版社にとって新たな試みだという。その場の音と絵だけで、子どもたちが自由にお話を作れるように、また読み聞かせする場合にも、読み手と子どもたちが一緒になって世界を膨らませて行けるように、という点が狙い。

2.Gökdelene Giren Bulut /『ビルにやってきた くも』
人気作家ベヒチ・アクの絵本。人気の作品を、ギュンウシュウ出版で、装丁も新たに復刻した。56歳以上推奨。


© Günışığı Kitaplığı

小さな町には雲を下にそびえるビルがたくさん建っている。小さなココと犬のボンボンは、雲を見下ろすビルの最上階に住んでいる。ココは「きっと下の方が楽しいだろうなあ」と思う。なぜなら、ここは雲の上だから雨さえ降らないのだ。
そんなある日、ビルを囲む雲がどんどん膨れて、ココの部屋に小さな雲をちぎって贈ってくれた。ココとボンボンは望むままに形を変える雲と夢中になって遊ぶ。すると、ココとボンボンを乗せたまま、雲は窓の外に飛び出してしまった。すると、ココと同じように高いビルの上で退屈していた人たちが、自分たちも乗せてほしいと呼びかけてくる。
今日のイスタンブルも、次々と巨大なマンションやビルディングが建ち、都市化が一層激しくなっている。中心部の観光地でもあるイスタンブルとは異なり、地方から集まった人たちが暮らし、トルコ経済の担い手となっているイスタンブルは、都市化しつつ外側へと広がっている。ベヒチ・アクは、都市に暮らす子どもたちと、大人にも、都市社会ならではの楽しみ方と、想像力の膨らませ方を提示している。
べヒチ・アクの絵本の復刻は、2007年のYüksek Tansiyonlu Çınar Ağcı/『高血圧のプラタナス』、2014年のBilyeler/『ビーだま』に続き、3冊目となる。


© Günışığı Kitaplığı
『高血圧のプラタナス』。野間国際絵本原画展の第五回奨励賞を獲得。日本語に翻訳、出版されている


© Günışığı Kitaplığı
『ビーだま』。遊園地でビー玉がいっぱいつまった壺をもらったイボは、夢中になり、ビー玉以外は目に入らなくなってしまう




執筆者プロフィール

Gökçe İrten
(ギョクチェ・イルテン
1990年、トルコ、マルマラ海地方のイズミット生まれ。ミマル・スィナン芸術大学で陶器・ガラスデザイン学科を卒業。サバンジュ大学大学院で、ビジュアルコンピューティングデザインを修了。ロンドンの王立芸術院で、児童文学作品の挿絵に関する短期の授業を受ける。最初の作品が、Kim Bu Gelen ?/『だれが きたの?』として、ギュンウシュウ出版から2017年発行された。現在はイスタンブルで活動を続けている。

Behiç AK
(ベヒチ・アク)
1956年、黒海地方のサムスン生まれ。イスタンブルで建築を学んだ後、1982年からジュムフリイェット紙に漫画を連載。児童書作家、漫画家、劇作家、美術評論家、ドキュメンタリー映画監督の顔を持つ。
児童書のうち『ビルにやってきた くも』『ネコの島』『めがねをかけたドラゴン』などは日本語に翻訳、出版されている。また、過去の作品を新しい装丁でギュンウシュウ出版より発表した。『ベヒチ・アクの笑い話』というタイトルにまとめられた物語は、子どもだけでなく大人の読者からも支持を受けている。30年来の漫画を集めた『ベヒチ・アクのイラスト集』も人気を博している。
Yaşasın Ç Harfi Kardeşliği/『Çの友情に乾杯!』(2013)は、Çocuk ve Gençlik Yayınları Derneği(児童・ヤングアダルト図書協会)によって、同年の最優秀児童書作品に選ばれた。『Çの友情に乾杯!』に始まる「唯一の子どもたち」シリーズは、Bulutlara Şiir Yazan Çocuk/『雲に詩を書く女の子』(2017)で6冊目となる。
大の猫好きで知られ、イスタンブルに暮らす。