第20回
1.Berk Operacı Oldu/『べルキはオペラ歌手』
オペラの舞台に関わっているカーン・エルビンギルの、二作目となる児童向け作品。少年ベルキが自分に何か才能はあるのか、ユーモアたっぷりに色々考える。ベルキシリーズの第二作となるが、一作目の『ベルキは発明家』とは独立した物語。小学校低学年以上推奨。
© Günışığı Kitaplığı
長い休暇が待ち遠しいベルキ一家が住むアパルトマンに、新しい人が引っ越してきた。その荷物は見たことのないものばかり。キラキラしてポンポンがたくさんついた洋服、ベルキの身長と同じくらいの帽子、大きくてとてもふくらんだかつら、変な顔をした銅像がたくさん。その荷物がぜんぜん片付かない。
ある日、ベルキ一家が父さんの上司から「休暇の許可」を待っていると、ベルが鳴った。ドアの外には、ほこりだらけの男の人が四人。新しく引っ越してきた人の手伝いに来たらしい。その中のひとりが口を開いた。
「ヘンリー五世のフォークを、おたくのベランダに落としてしまいまして」
その後、四人は「アラジンのランプ」をネリマンおばさんの家に拾いに行った。
休暇を待つベルキの周囲では、みんながいろいろな習い事を始めた。ベルキも自分にできることが気になってあちらこちらと挑戦してみる。そしてついにべルキは、新しい隣人、オペラ歌手のアルプドーアンさんのもとにたどりつく。
一作目の『ベルキは発明家』では、発明の才能があるかどうかを試され、試験にふり回された。
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二作目で作者は、習い事や塾などへ次々と連れて行かれ、参加する子どもたちが何を考え感じているのかをユーモアを交えて描いている。
フルカラーの挿絵と表紙は一作目同様、メルヴェ・アルトゥゲンが担当している。
2.Bulutlara Şiir Yazan Çocuk /『雲に詩を書いた女の子』
作者のベヒチ・アクが自ら挿絵と表紙も手がける、「現代社会の迷路」と、そこで悩み、解決策を見つけ出していく子どもたちを描くシリーズの最新作。小学校中学年以上推奨。
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セヴィジャンは引っ込みじあんな女の子。学校用のカバンには、その日の時間割だけではなくて、全科目の教科書とノートが入っている。カバンが重たいのでいつも歩くのがゆっくりだ。
お母さんはセヴィジャンが通う学校の先生で、「創造性」というものをとても重要視している。毎月「創造的な宿題」を出すのだけれど、セヴィジャンはこれがとても苦手。何を考えて、何を作ったらいいのかまったく思いつかない。友だちのバトゥみたいに頭はよくないし、エロルみたいにいろいろなことを思いつくこともできない。そんなことを考えてゆううつな時は、いつも雨に濡れながら歩く。
ある日セヴィジャンは、最近ではソーシャルメディアやメールが増え、だれも手紙を書かないので、郵便配達のヌーレッティンさんがカバンに手紙とは全然別のものを入れていることに気が付いた。次の「創造的な授業」では、みんなで手紙を書こうと提案しようと決めた。ところがバトゥが同じことを考えて、先に提案してしまったのだ。悔しく思ったセヴィジャンは、人ではなくて雲に手紙を書くと宣言する。
帰り道、じっと雲を眺めていると、雲に贈る詩が一行、二行と浮かんできた。それを書き留め、ソーシャルメディアに投稿すると、あっという間に人気が出てしまった。そんなつもりはなかったセヴィジャンの毎日は大きく変わってしまう。
どの子どもにも、常に形を変える雲のようにそれぞれの在り方と考え方がある、と考えるベヒチ・アクは、現代社会で周囲と比べられては、また自分で比べては悩む子どもたちにこの作品でメッセージを送った。
ベヒチ・アクのこのシリーズは、2013年に発売された『Çの友情に乾杯!』に始まり、本作で六作目となる。
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作者は作品ごとのテーマカラーを決め、表紙と挿絵の色をそれぞれ統一している。『Çの友情に乾杯!』は黄色で、『雲に詩を書いた女の子』は紫がテーマカラー。他、水色、緑、オレンジ、青の色と作品がある。