第3回
──いろいろな児童書の国際的なブックフェアがありますが、参加されているフェアは?
ギュンウシュウは、2005年から国際的なブックフェアに参加するようになりました。以降、フランクフルトとボローニャのブックフェアには必ず参加するようにしています。この他、ロンドン、ライプツィヒ、パリのブックフェアにも、必要があれば参加します。しかし、最も重要なのは、前にあげたフランクフルトとボローニャのフェアです。この2つのフェアで他国の出版社との繋がりを広げ、深めてきました。
©Günışığı Kitaplığı
『飛んだ火曜日』
空を飛びたいと願う少女スィベリンが、火曜日に市場に出かけると……。挿絵は、有名な挿絵画家ムスタファ・デリオール
──国際的なブックフェアに参加する意義とは何でしょう?
もちろん、最大の目的は、ギュンウシュウが版権をもっているトルコ作家の作品を海外へ紹介することです。海外の出版社とフェアで繋がりをもち、ギュンウシュウの作品を手にとってもらうことです。ほかにも、出版部の研修や最新の出版傾向の研究など、利点は多いですね。この面において、フランクフルト書籍見本市は出展数、会場面積共に最大規模なので、非常に重要な場といえるでしょう。
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『イスタンブルの物語』
物語を読むようにして、イスタンブルの歴史を知ることができる
ボローニャの国際児童書展は、児童書出版社であるギュンウシュウにとって、今後の方向性や戦略にとって最重要ですし、勉強と研究の場でもあります。とくに挿絵の分野において、私たちにとっては有意義です。児童書展と同時に開催されるボローニャ国際絵本原画展、その他の各国の展示、出版社の目録など、素晴らしい示唆を与えてくれる資料の宝庫ですよ。
またアストリッド・リンドグレーン記念文学賞、国際アンデルセン賞の行方にも、注目しています。
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『虎の女王』
実の父である王に母を殺されたティギラが、女性戦士集団アマゾネスの女王になるまで
──自国の作品を海外へ紹介・販売する際は、代理店などを通す場合もありますが、ギュンウシュウは自らの手で紹介しているのですね
トルコでも通常は代理店が海外での版権を管理しています。代理店が、翻訳業務などを行いますね。また周知のとおり、各国の海外出版事業には、著作権輸出センターも関わります。海外に出版物を販売する専門の機関です。
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『ゴラット城の囚人』
「美しい馬の国」といわれた、古代カッパドキアに暮らす若者たちの冒険
ギュンウシュウでは、方法が少し異なります。私たちは、作家の皆さんとともに長く続く出版作業を心がけ、それを続けてきました。ですから、作家の皆さんの作品のいちばんの魅力を深く理解しているのは私たちなのです。そして、魅力を最大限に引き出し、世界に紹介できるのも私たちであると自負しています。
だいぶ前の短期間のことですが、私たちも代理店をとおして海外へ作品の紹介をしていました。そのころに以下のことに気づいたのです。たしかに「本を売る」という商業目的ではありますが、「本」を海外へ出すということは、作品の紹介と同時に、「文化」の間をつなぐ作業である、ということです。ですから、ギュンウシュウの作品を正しく認め、受けとめてくれる海外出版社を探すこと、これが重要なのです。
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『王の伝令』
盗賊に殺された父のようにヒッタイト王の伝令となることを夢見る少年の成長と恋の物語
──作品を海外に紹介するための具体的な活動を教えてください
いろいろな国の、いろいろな出版社とコンタクトをとるために、とくにブックフェアでの利便性を考えて、まず英語のカタログをつくることから始めました。次にカタログを電子化し、CDやウェブでも見られるようにしました。また、あらすじや抜き刷りの英語版や、作家紹介の資料も用意しています。さらに、年内に海外版権についての特設ウェブページも開く予定です。これで、ギュンウシュウの全作家と全作品を、英語とドイツ語で検索することができるようになりますよ。
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『本なんて!』
本と子どもたちの関係を描く短編集。自然に本に親しんでほしいという思いが込められているという
──最初の海外での出版は、何年で、どの作品だったのでしょう?
2006年、べトゥル・サユンの『イスタンブル五つ、子どもは五人』が、グルジアで翻訳、出版されました。私たちの海外への挑戦はここから始まったのです。
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『イスタンブル五つ、子どもは五人』
石器時代から現代まで、今はイスタンブルと呼ばれる土地に暮らす5人の子どもたちの姿を描く
──これまでに海外で出版された作品と、出版された国を教えてください
まとめると、以下のようになります。
■ドイツ
『イスタンブル五つ、子どもは五人』べトゥル・サユン
■イタリア
『はちみつクッキー・カフェテリア』ゼイネップ・ジェマリ
■スイス
『飛んだ火曜日』ミュゲ・イプリッキチ
■グルジア
『イスタンブル五つ、子どもは五人』べトゥル・サユン
■ブルガリア
『イスタンブルの物語』ミネ・ソイサル
『虎の女王』
『ゴラット城の囚人』
『王の伝令』イスメット・ベルタン
■アルバニア
『本なんて!』ミネ・ソイサル
『飛んだ火曜日』ミュゲ・イプリッキチ
『お日さまを直した男』ベヒチ・アク
『小さな魔女シェロクスと大きな罠』アスル・デル
『はちみつクッキー・カフェテリア』ゼイネップ・ジェマリ
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『お日さまを直した男』
何でも直せてしまう修理屋カディルさんと、彼の暮らす島の人々のドタバタを描く
──今日の世界において、トルコ児童書の位置はどのようなものでしょうか?
いま、トルコ国内での児童書、ヤングアダルトの出版界で占める位置は非常な速度で発展しています。軽んじることができない出版の一分野として認められつつあります。これによって、児童書の作品数も増えていますし、作家として名をなしている方々が、児童書やヤングアダルトの作品を手がけるようにもなっています。
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『小さな魔女シェロクスと大きな罠』
古い呪いがよみがえり、「物語の国」の人々は言葉を忘れてしまう。濡れ衣を着せられたシェロクスは言葉をとりもどすために旅立つ
この動きが、トルコの児童書、ヤングアダルトに少しずつ世界の目が向くのを促しています。自国の作品で完結しがちなヨーロッパの児童文学界も、質のいい作品であれば、手にとってくれるようになりました。ゼイネップ・ジェマリの『はちみつクッキー・カフェテリア』がイタリア語に翻訳されたのは、この面で非常に大きな前進であると思っています。